2013年2月24日日曜日

「職場はなぜ壊れるのか―産業医が見た人間関係の病理」荒井 千暁 


平成不況、そして成果主義の導入と、うつ病などの精神疾患の職場における発生を、実際の事例をもとに産業医の観点から考察しています。

「成果主義の導入によってどんなよいことが起こったのか、それを挙げられないのであれば、やはり弊害しか目立たないのではないか」という視点は当たっていると思います(人件費の総額を減らせたことが経営にとってのメリットだったかもですが)。また、年功制に戻す可能性も提案しています。私としては、特に大きい組織では年功制には戻れないと思います。その理由は、月並みですが、もはや右肩上がりの成長は望めない時代になったからです。

「目標管理制度」についても、その弊害を指摘しています。結局は、「達成できそうな目標しか設定せず、会社全体の業績につながるとは限らない」という指摘です。従業員あるいはそのチームの結果(業績)が、賞与などの査定に直結するならば、わざわざハードルの高い目標を設定するバカはいないと思います。

職場での精神疾患発生の背景を、単一の理由(成果主義だから、とか、景気がよくないからとか)で説明することは無理だし危険でもあります。複数の要因を科学的に解析するのも難しいでしょう。
「雇われる立場」を捨てることが一つの方向であるかもしれません。

職場のメンタルヘルスに関して、「新型うつ病」(非定型うつ)には触れられていません。本書は2007年出版なので、新型うつが出てきたのはその後でしょうか。


*絶版っぽいです。新たに買った本の他に、自分の本棚にある本をエイヤッと紹介するスタンスのために、絶版本が登場する機会がしばしばです。

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