2016年10月30日日曜日

「さよならインターネット- まもなく消えるその「輪郭」について 」家入一真


著者のこれまでのインターネットとのかかわり(過去の部分)と、これからどうなっていくのだろうか(どうなってきているのか)が書かれている。

インターネットの世界でいわれていた「シェア」、「フラット」、「フリー」のうちで「フラット」ではなくなってきた事実の指摘は興味深い。すなわち、ネット上では匿名も可であり、そこではリアルの社会的な地位や年齢、性別も関係なかったはずなのに、いまや実名や肩書が幅を利かせる状況がみられる。このあたりの状況がネットとリアルの境界線がなくなってきていると表現できるだろう。

また、ネット時代となったことでコミュニケーションコストが下がり切ってしまい、その結果どこでもつながるから休めなくなったという。逆にいうと、かつてはコミュニケーションにはそれなりのコストを要していたわけだ。電話だってお金がかかるし、ましてや手紙となるとそれを書くのに要する時間のコストも要したわけだ。サービスのコストが下がればそのユーザーも増えるわけで、その結果、いうなれば「つながり過ぎ」による疲弊という思わぬ影響が生じたというわけだ。ネットであれリアルであれつながりをもつことは大切かも知れないが、反対につながらずにいる(孤独とまでは言わないが)ことも必要なのではないかと思う。

「人の価値をポイントで決める」ということ記述があるが、そのはしりはネットオークションの出品者の評判あたりだろう。全く知らないひととの取引で、ようはその人に対する「信用」をどう評価するかの手掛かりになる。そうした評価の拡大版として、実生活で「あの人は○ポイントで結構高いね」とか「あの人のポイントは低いからダメだ」とか言われる社会がくるのだろうか?

ネットの世界とリアルとの関係性を考える上で参考になる本であろう。