2014年4月26日土曜日

「日本の人事は社風で決まる」 渡部昭彦

「日本の」というよりは、「日本企業の」人事と言ったほうが正確であろう。実際、外資系企業との話は別のものとして論じている。
副題にもあるように、社風とはコトバでは表現できない暗黙知であるとしている。そして、社風を決める要因として、ビジネスモデルを規定する顧客との距離、資本形態(=株主は誰か)、会社の歴史の3つを挙げている。(なお、ここでは詳しくは言及されていないが、企業が合併していく過程で社風がどのように変化するかは興味のあるところだ。)

「社風と採用」の章は興味深い。なぜなら、新卒採用は人事部の面接では、最初の3分で決まるといっているからである。当然、そこまでには選別も行われるだろうが、結局は、会社の社風をよく反映する人事部が「暗黙知の」社風で決めるというのである。つまり社風に合いそうになければ採用されないといえる。
この事に関係して、以前にある会社の人事担当が「自分の上司は、とにかく人を見る目は間違いがない」といっていたことを思い出した。はっきりと規定できない判断基準(それは往々にして社風だったりする)を人事部長(級)の人は使うことのできる技量を備えているということだろう。

社風を知り、できるだけ社風にあわせることで出世できるが、大事なことはライフワークバランスと、社内の人間との距離での立ち位置にあると述べている。すなわちワーカホリックと私生活重視のどの辺とするのか、また、従来の日本企業でみられたウェットな人間関係なのかドライでいくのかの立ち位置である。また、自分のいるべき立ち位置を知っても社風に会わないと気づいたときには、他の会社に移ることも視野にいれてよいだろうと述べている。

この本は、外資系ではないことを前提としているので、スペシャリストとしてキャリア形成を考える人にとっては関係ないかもしれない。(外資系には「社風」はないと著者は言っている。)ただし、自らの技量ひとつで食っていける世界は相当厳しい。そんな仕事の世界は、「10年後に食える仕事食えない仕事」で示されたカテゴリーでは「無国籍ジャングル」の部類だろう。

終身雇用を選ばないにしても、生きていくうえでは、その場の空気を読み取る力がその人の人生を左右するとも言えるのではないだろうか。



0 件のコメント:

コメントを投稿