2013年1月14日月曜日

「英語で話すヒント」 小松達也

本書では通訳者として必要な技術を、英語学習者に役立てるための方法が紹介されています。

日本人に求められる英語力を、「日本のことをよく知り、社会や世界の動きなどについて自分自身の意見を持ち、それを外国のヒトに分かるように発言できる能力」と言っています。(だからこそ、タイトル[英語」ではなく「英語」としてるのでしょう。)
自身の意見を発言する際には、「まず日本語で考え整理してから英語で表現するほうが特に初心者にはよい」と述べています。確かに、日本語でうまく表現できない自分の意見を、まして英語で表現できるわけがなく、納得できます。よく言われるように、まずは日本語(母国語)を正しく使いこなせることが、外国語をうまく使うための前提といえるでしょう。

聞き取りでは、「すべての単語を聞き取る必要はなく、聞き取れた単語の前後関係から何を言わんとするのかを類推する態度こそが大切」で、逆に、話すときには、「発音が多少悪くても(たとえばLとRの区別ができていなくても)、話の脈略のなかから聞き手が理解するのでそれほど問題ではない」と述べています。これは英語に限らず、日本語で会話するときも同じだと思います。聞き手は相手の発言の「音」をすべて聞き取った上で相手の話の内容を理解しているとは限らないからです。会話において、話し手の不正確な発音の単語を聞き手が勝手に(無意識の推測で)判断して解釈することで「誤解」の起こる状況は、日本語でも同じです。


通訳者の視点として、英文法的な解説もなされています。

「パラグラフ、 メインアイデア」の重要性に関して、
「パラグラフはメインアイデアを中心として話が展開される。メインアイデアは、センテンス(マスターセンテンス)で表される。そのセンテンスは通常、パラグラフの冒頭にくるので、最初を注意して聞くことで大意をつかむことができる。」と述べています。この点は、日本語で話したり書いたりする際にも「論理的な構成」であるためには重要なポイントだと思います。

ボキャブラリーを増やす方法に関しては、
「意図的な習得(受験勉強のように単語だけを切り離して記憶しようとする方法)は語彙の25%を超えるべきではないく、本を読む過程で身につくような付随的な習得が望ましく、多読は効果的である」と述べており、具体的にはミステリーを多く読むこと挙げられています。
自分も付随的学習方法には賛成です。何よりも、意図的習得の過程は楽しめないし、本を読む際に出てくる単語を覚えるほうが自然だからです。(最近読んでいる小説に、何度も"grin"という単語が出てきて、覚えることができました)。ただ、意図的な習得でも25%以下であれば悪くないということであれば、地道に単語を暗記して語彙を増やす努力も一方では必要かもしれません。

コローケーションに関しては、
「正しいコロケーションを知っていれば、きれいで自然な英語が話せる。ただし、コロケーションのつながりは理屈ではなく慣用的に決まったものなので、出会った際に地道に覚えていくしかない。」として、「強い雨」は"heavy rain"で、"strong rain"と言うのは不自然だという例を挙げています。ある意味、文法的にはすっきりと説明できないこうした部分は、地道に覚えるとともに、多読なりの経験でより多くの英語に触れることによって自然さや不自然さを体得するしかないのでしょう。

「英語学習には持続性が大切であり、学習は生涯続くものだから楽しんで学習する」ことがすすめられており、「進歩を目指すのは楽しいこと」だと述べています。だから、どれだけ進歩したかを実感できる仕組みを取り入れることが持続性の維持に必要なのでしょうね。




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