2013年1月27日日曜日

「感情労働シンドローム」 岸本 裕紀子

「感情労働」の概念は1970年代にアメリカで生まれ、当初は、客室乗務員など外の顧客を相手にした仕事に対する概念だったようです。著者はこの「感情労働」が、一つには、職場の上司や部下の「内向きな」顧客以外に対しても必要とされてきた点、また、従来感情労働に無縁であるとされていきた教師などの専門職にも必要とされてきた点を指摘し、それらに伴った問題が生じ広がっている現象を「感情労働シンドローム」と名付けています。

この感情労働の広がりのなかで、職場における世代の違いと感情労働の影響の違いが生まれた時代的的背景として、日本の景気減速、そして、日本における成果主義の導入、そしてこれらに関係する雇用形態の変化を挙げています。

この本で知って驚いたのは、経済産業省が2006年に、社会が求める「学んだ知識を実践に活用するために必要な力」として「社会人基礎力」を打ち出している事実です。それは、
 前に踏み出す力、
 考え抜く力、
 チームで働く力
の3つの能力そしてそれらがさらに具体的な12の要素からなっています。
いよいよ国家が社会人を育成する時代になったのでしょうか? 社会人として求められる能力は入社後にOJTでやればよいと思うのですが、終身雇用の形態がなくなり、即戦力が求められる今では、OJTなどと言ってられないのかもしれません。
しかし、いかに就活を通じて準備をしてきても、社会人となった後での何らかのギャップは避けられませんから、それが感情的なひずみを引き起こすのでしょう。社会でもマニュアルに沿ってすべてが片付けば楽なのでしょうが、そうはいかないことも多いです。(すべてマニュアルで対応できる仕事を選べば別ですが。)

本書の内容は、読むヒトの年代によって感じ方が違うかもしれませんが、昨今の「気持ちの病んでる」ヒトが増加している原因を考察するうえでの参考になるでしょう。











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