2013年5月26日日曜日

「空気の研究」 山本七平

ここでいう「空気」は、時代のムードとも言い換えられ、「空気」が決定に影響した例として、「戦艦大和」の出撃の話が取り上げられています。どうみても無謀な出撃は、その決定時に漂っていた空気に逆らえなかったためだというのは周知の事実でしょう。

空気は強固で絶対的な支配力を持つ「判断の基準」であり、決定に際しては論理的判断の基準のほかに「空気が許さない」というような空気的判断の基準が適用される、と述べています。

空気の支配を断ち切るには、対象を相対化することが一つだと述べています。逆に言えば、対象を絶対化すると空気の支配が起こるということです。その例として公害問題について、公害対策基本法の改正で「経済の健全なる発展との調和」のくだりが削除されたことを挙げています。すなわち、経済の発展と、公害問題という2つを対立する相対的概念で捉えていたものを、前者を削除することで公害を絶対化してしまい、公害という問題を解決できなくなると述べています。公害が絶対化されると、公害をなくすために工場を全閉鎖しろという空気が支配的になり、仮に工場が一掃され公害がなくなっても、「公害問題」は解決しないということです。

空気が形成される背景として宗教的な点を指摘しています。つまり、一神教の世界では一神が絶対化されているので、他のすべては相対化されるが、日本はアニミズムの世界なので相対化がなく絶対化の対象が無数にあると述べています。宗教的な背景から空気を説明できる点は興味深いです。



今回、かなりの時間を要しましたが内容の理解は正直なところ不十分でした(「臨在感的把握」はキーワードのひとつですが、ピンと来ませんでした)。本書の内容は「「空気」の研究」、「「水=通常性」の研究」、「日本的根本主義について」の3つから構成されていますが、今回は最初の「「空気」の研究」だけです。
まずは、聖書の知識や、共産主義思想、第2次世界大戦での日本の状況についての背景知識を持っていないと内容を理解するのは難しそうです。基礎知識を仕込んでから再度チャレンジしたいと思います。

2013年5月25日土曜日

蔵書のミニマリズム作戦(その2)

以前のエントリーで、蔵書ミニマリズム作戦について述べました。
今回はその経過です。

本を減らす方法として、以下の2つで進めました。

1.中古として処分する(=「BOOK-OFF」へ依頼)
もはや読むこともないだろうという本、そしてたぶんゴミにしかならない本が該当

2.電子化して元の本を処分する(=「BOOKSCAN」へ依頼)
見返す頻度の低い本や、かさばる本が該当


1のブックオフオンラインでは、買取235冊、査定ゼロ円での引き取り66冊となりました。

ブックオフオンライン【PC・携帯共通】

以前も書いたとおり、送料無料で引き取り依頼ができる点がよいです。しかも、大きな声では言えませんが、たぶん「ゴミ」だろうという本も一応引き取ってくれるもよいです。こちらを利用したおかげで、「資源ごみ回収日」に、収集場所にまで持っていく手間を省けて助かりました(特に引越してからは、資源ごみ回収場所まで100m以上も離れており、かなり不便)。
買取価格が気に入らなければ、そのまま返却してもらうこともできます(だたし送り返してもらう送料負担要)。できるだけ高く売りたいならば実店舗のブックオフに持ち込んだり、他の中古買取業者と比べるのがよいでしょう。


2のブックスキャンで374冊を電子化しました。
プレミアム会員で、9800円で月50冊(ただし350ページ以上は2冊としてカウント)が電子化可。50冊を超えると割安料金が使えないので毎月50冊程度のペースで進みました。
キャンペーンで2回分くらいは送料無料でしたが、通常は送料負担です。ざっと送料を1200円として、一冊220円(=[9800+1200]/50)の費用がかかりました。したがって、電子書籍版が200-300円程度で入手できるなら、ブックスキャンのサービスに頼らなくてもよいでしょう。
ブックスキャンのサービスではPDF化したファイルをさらに各端末で読みやすいようにフォーマットできます。しかし、所詮はPDFなので、特に(画面の小さい携帯田端末で)拡大して読むと読みやすいとはいえません。個人的には、電子書籍ならば端末で、PDFファイルはPCの大画面で見たほうが読みやすいと思います。


蔵書の「物理的な」減量を進めることができたので、あとは、物理的に増やさないことを心がけたいものです。

2013年5月19日日曜日

猫にきびとその対策




ついに猫ネタ登場です。もちろん我が家の同居ネコです。
写真のように、年明けにブツブツが発生しました。
猫にきび(黒いぽつぽつ)がアゴの下に見えます
口元にはでかめの黒いブツが見えます
こんな感じで発生です。見た目だけの問題ならよいのですが、たまにかきむしられて出血しているのが困ります。

あごの下の皮脂が酸化して黒くなるらしいのですが、ネットで調べても、その真の原因は不明らしいです。えさの種類やストレスとか言われています。あとは清潔に保って予防できるとか言われてます(人間のにきび予防と同じ理屈でしょうね。)

タオルにぬるま湯を湿らせてこすり取るという方法もあるようですが、かなりしつこくくっついています。そこで、いらなくなった歯ブラシでブラッシングしてみると、うまくとれました。

使わなくなった歯ブラシでアゴ下を
ブラッシング



ブラッシング後にお休みの図
あとはえさをいれる皿の材質も影響するという話もあるようです。プラ系だとアゴにあたってそこが不潔になるのでよくないとか。真偽のほどは不明ですが、私のところもえさ皿の材質をプラから磁器製に変えてみました。
かきむしられて出血していなければ、あまり神経質になる必要はないでしょう。

2013年5月18日土曜日

「The Cat That Tamed a Flame」  James D. Maxon

通勤電車で少しづつ読んだKindleペーパーバックです。

森の火事を何とかするために、オオカミから助けを求めて呼び出されたネコSamuelが火消しのための旅に出て、その道中で飼い猫では味わえない経験を積むというストーリです。
「put out a flame」ではなく、「tamed a flame」という表現は、実は炎自体も擬人化されているので、しっくりきました。(まさか、flameまで人格が付与されていたとは思ってもみなかったので。)
「最後に森の火事も鎮火して、めでたしめでたし」というエンディングを想像していたのですが、その予想が裏切れれた点がおもしろかったです。前述のように、tamed a flameのニュアンスを正確に理解できていれば、結末での驚きは少なかったかもしれません。

ネコのしぐさに対する描写が何回か出てきます。ネコ好きの立場として、それらのしぐさを想像できるので、そのことも手伝って割と話の中へ没頭できたのではないかと思いました。

  kindleのカテゴリーでは、Children's Books > Literature > Fairy Tales, Folk Tales & Myths に入っていますが、ネコ好きであれば大人でも楽しめるはずです。


先月は無料で入手できたのに、今日(5/18)現在では¥300となってます。そのうち、またキャンペーンで安くなる日が来ることを期待しましょう。

2013年5月12日日曜日

「憂鬱でなければ、仕事じゃない」 見城 徹, 藤田 晋

一つの「お題」に対して、見城徹→藤田晋の順に見開き2ページづつで意見を述べるスタイルとなっています。それぞれが「経営者」としてのビジネスに対する見識を述べていますが、意見が逆のこともあります(「切らしえて渡せなかった名刺は速達で送れ」のお題が顕著な例です。)彼らの年齢およびインターネットへのかかわりかたの違いでしょう。
私が気になったものを以下紹介します。


■小さいことにくよくよしろよ
「頼まれ事はちょっとしたことでもきちんとこなすこと」や「借りた恩は、たとえ小さくても返す」といった些細なことが、ビジネスでは重要と述べています。結局、人間がかかわっている限り、義理と人情は大切です。


■「極端」こそわが命
見城氏は、
「極端」であれば振り切れており突き抜けたオリジナリティーがある。だから、明快で新しい。
と述べており、そのためには「圧倒的努力」をするしかないと述べてます。
「圧倒的努力」とは、以下のことと述べています。
人が寝ている時に寝ないってこと。
人が休んでいる時に休まないってこと。
どこから手を付けていいかわからない膨大なものに、手を付け、最後までやり通すこと。
最初の2つは時間的な努力ですが、3つめは以前紹介した電通鬼十則を思い出させます。

■これほどの努力を、人は運という
ビジネスの成功に対して、時として人は「運がよかったせいだ」と評することに対して、それは「運」ではなく、圧倒的努力(上述)があってこその結果なのだ、と述べています。
藤田氏は、
「運がいい」とは「先見性がある」と言い換えられるのではないかと述べ、
その「先見性」の正体を、
実は物事を先送りせず、短期的に何かを犠牲にしてでも、努力してきた結果に過ぎないのではないか
と言っています。
「極端」であること、人から「運がいい」と言われる結果を残すこと、いずれも、「努力」なくしてはありえないと結論付けられるでしょう。


■憂鬱でなければ、仕事じゃない
見城氏は、
楽な仕事など、大した成果は得られない。憂鬱こそが、黄金を生む
そして、悩んで憂鬱となる限界を超えるには
「暗闇の中でジャンプ」するしかない
と述べており、さらに「人生は暗闇の中のジャンプの連続」と表現しています。「迷ったときは、前に出ろ」という彼の信条を別表現したものでしょう。電通鬼十則の「4.「難しい仕事」を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。」と通じるものがあります。
「やさしい」道と「困難な」道の選択の岐路に立ったとき、「困難な」ほうを選択するのは実際には容易でないと思います。その裏には「圧倒的努力」ができる自信があるからかもしれません。

ただし、ここでの「憂鬱」は「困難さに対する悩み」や「考え抜く苦しみ」の意味合いで使っていると思います。(本当に憂鬱だと、そのうち鬱病になる危険性があります。)


■刺激しなければ、相手の心は掴めない
見城氏は、
難攻不落の相手とコミュニケーションを取る際の基本として、自分ではなく、相手のことを言え
と述べており、藤田氏は、
初めて会った時の自己紹介で、自分ではなく相手のことでハッとさせられる一言を言えるかが重要だ
と述べています。
これらを実行するには、事前に相手のことをよく調べておく必要があります。また付き合いが長くなれば相手のわずかな変化も見逃さないことが重要でしょう。別のお題の「天気の話でコミュニケーションを図るホテルマンは最低である」で、天気の話を持ち出すような安易なコミュニケーションではなく、おざなりでない観察や心遣いに基づいて話しかけなければ相手の心に届かない、という指摘に共通すると思います。
コミュニケーションで相手に興味をもち根本思想を理解する大切さは、以前のエントリーで触れました。「相手をよく理解する(ように努める)」ことは共通しています。



分野の違う二人の経営者が、同じテーマ(お題)に対して書いている点が、単著ものとは違う特色を出しています。

2013年5月11日土曜日

「あなたの話はなぜ通じないのか」 山田ズーニー

文庫本の初版が出たのが2006年です。私がこの本を買ったのもそのころだったと記憶してます。
ずいぶんと久しぶりに読み返しましたが、コミュニケーション力アップ本として良書であることを再認識しました(だからこそ、未だに重版されているのでしょう。)

本書で指摘している一番のポイントは「自分のメディア力を高める」ことに尽きます。
ここでの「メディア力」とは「信用(信頼)力」と、「自分という人間の中身を、きちんと相手に伝えるチカラ」と言い換えることができるでしょう。

「メディア力」は、時代性とか、運とか自分でどうにもならないものもあるが、
日ごろの、立ち居ふるまい・ファッション・表情。
人への接し方、周囲への貢献度、実績。
何をめざし、どう生きているか、それをどう伝えているか? 
によって形成されると述べています。

「メディア力」の大切さは、「何を」伝えようとしているかよりも、「誰が」伝えようとしているかで受け手の反応が異なるという事実からも明らかでしょう。「誰が」のメディア力が低ければ伝わらないということです。同じ記事を「日経新聞」が伝えるのと「スポーツ新聞」が伝えるのとでは、後者ではあまり信憑性を持った記事として受け入れられない例が挙げられています。

また、「人は中身をよく知って判断されるのではなく、その人の情報で判断される」からこそ、「メディア力」が重要だと述べています。通常、その人の「内面」ではなく印象や周囲の評判で判断されることから、「自分がどう見られているか」という点をよくすることが重要だということです。そもそも、「他人」を内面から理解するには、相当の時間を要することは間違いないでしょう。
「自分」を伝えようとするには自己アピールは重要ですが、アピール下手であれば無理する必要はない、むしろ「謙虚」という点を生かすべきとも述べています。

根も葉もない噂が立った時に、変に釈明しても納得してもらえない、その理由はその時点で当人のメディア力が低下しているからだという見方は面白いです。(だからそんな時は、メディア力のあるスピーカーの援助が必要だと述べています。)


会話のコミュニケーションで重要なこととして、相手の「根本思想」を理解することを挙げています。「根本思想」とは、その人を発言に向かわせている動機・想いのことです。つまりは言葉では表されていない言外の意図や意思を「汲み取る」、あるいは「察する」ことが重要であるといえます。
超能力者でもない限り、相手の心を読むことは不可能です。しかしその相手が職場の同僚など近い人であれば、普段から相手に興味を持って接することで、多少は意図を読みやすくなるのではないでしょうか。「好き」になる必要はないですが、「無関心」では根本思想の理解はままならないでしょう。

「メール」で伝わらない、どうしたら伝わるかについてもわかりやすく解説されています。具体例が多く紹介されている点で実用的です。
論理的に話す、聴く技術については他の本と書いていることに変わりありませんが、やはり実用的な知見からまとめられています。

2013年5月6日月曜日

図書館限定の「アジアの現代文芸」シリーズ

先日、市立図書館内で本を物色していたところ、「アジアの現代文芸シリーズ」という書籍群を発見しました。本屋では見かけない本です。このシリーズの中で、「現代タイのポストモダン短編集」を借りて読みました。
文学作品なためか、話のオチがあるというよりは、読んだあとでいろんなことを想像させる短編だと思います。また文化的な背景をある程度知らないと、読んでいても想像を膨らましにくいかもしれません。

このアジア現代文芸シリーズについて調べてみたところ、市販品ではなく、「大同生命国際文化基金」が事業の一環として出版して図書館などに寄贈しているようです。どうりで本屋で見かけたことがないわけです。

http://www.daido-life-fd.or.jp/business/publication/publish
(HPから、以下一部を抜粋)

アジア諸国の現代文芸作品の日本語翻訳出版「アジアの現代文芸」シリーズ
アジア諸国の現代文芸(小説、詩、随筆、戯曲、評論)の内、わが国への紹介が望まれるものを選考のうえ、翻訳・出版するもので、アジアの国々の今日の姿をそれぞれの国が生んだ文芸作品を通じて理解することを目的としています。
より多くの文学ファンの眼に触れてもらうことを目的に、2012年度から新刊・既刊の電子書籍化を行ってい
ます。





さらに一部は電子書籍として読むこともできます(無料です)

「大同生命」の回し者ではありませんが、こんなにすばらしい事業を展開しているとは知りませんでした。
今回のような思わぬ発見もあるし、本を借りるなら自宅の収納スペースを心配しなくてよいので、今後図書館を活用したいです。

2013年5月5日日曜日

「不機嫌な職場」 高橋克徳+河合太介+永田稔+渡部幹

相互に協力することが少なくなった「不機嫌な職場」に対する考察とその解決案が述べられています。

個人の仕事で手一杯で、他の人に協力することができなくなり、しまいには精神を病む人を生み出すギスギスした職場を生み出す要因は何か、以下の3つを挙げています。

1.仕事が細分化、高度化することにより、部、課、あるいは個人の業務単位内でしか仕事が見えなくなった。
*「タコツボ化」と表現されています。「セクショナリズム」と言ったほうがわかりやすいかもしれません。)

2.社内でどんな人がいるのか、組織内で個人の「人となり」を共有できなくなった。
*「評判情報」が共有が難しくなったと表現しています。協力を要請するにしても、依頼する相手がどんな人間か(仕事以外の面も含めて)知っていれば協力しやすいですが、それができない状況です。

3.インセンティブが効かなくなった。
日本の従来の雇用体系では、金銭面以外にもインセンティブがありました(例えば長期的雇用の保障。)平たく言えば、会社に忠誠を尽くせば何とかなっていたということです。その状況がくずれると社員間での協力も後ろ向きになります。


1.に対しては、以下を提案しています。
  • 共通となる目標や価値観を設定して共有化する(共有化の工夫が大事)
  • 発言や提案に対して壁を作らない、さらにそれらの発言や提案をまじめに取り上げる
  • 特定人しか仕事内容がわからない状況を避け、周りが手伝いやすい環境をつくる

2.に対しては、「会社でのインフォーマル活動を見直す」ことと、さらに活動を機能させるために「面白く」するを提案しています。
具体的には、社員旅行や会社の非公式行事を活用することです。
私の経験でもインフォーマルなネットワークを社内で持っておくことは、仕事を速やかに進めるのに有効です。よく知っている相手であれば、「3」の効力感も高まるでしょう。
一方で、仕事とプライベートをどう切り分けるか(切り分けるべきか)という議論もありますが。


3.に対しては、
これまでとは別のインセンティブ、「効力感という感情を与える」ことが必要である(効力感=手ごたえ=「相手から真っ当な反応が返ってきた」そのときの心地よい感触)
と述べてており、「効力感」は、反応が感謝や認知であればより助長されると述べられています(認知=他人を認める応答=「この人すごいよ」といってもらえること。)そうした例はインターネットの世界で見られます。例えばネットの掲示板で困ったことを書けば、助けてくれる人や情報をくれる人がいますが、彼らの行動の原動力となっているのは金銭的なものではなく、効力感が得られることなど精神的な面が大きいでしょう。

現代は「認知飢餓社会」であるために、「学校や会社よりもネットのほうが楽しく生きがいを感じるといってはまっていく姿はそれを象徴している。」という考察はそのとおりと思います。現実世界が認知を受けにくくなったこと、さらに、ネット上では認知を受けやすい世界であることも要因だと思います。

協力し合える組織として「グーグル」、「サイバーエージェント」、「ヨリタ歯科クリニック」の例が紹介されています。ネット産業のようなクリエイティビティを重視する組織と一般の製造業では状況は異なりますが、参考にはなるでしょう。

「2」と「3」については、職場という内向きな場所だけではなく、例えば起業して独立する場合にも適用できるポイントだと思います。

2013年5月4日土曜日

「希望の仕事論」 斎藤 貴男

サラリーマンなら「独立」することを考えたことがあると思います。
会社に入る前から「そのうち辞めて独立」と計画している人もいる一方で、サラリーマン生活がいやになって「独立でもするか」という人もいるでしょう。(まだ後者が主流ですかね。)

本書では成果主義が日本に導入された弊害と、会社を辞めて独立することの良し悪しを中心として、著者の、記者からフリーランスのジャーナリストになった経験が語られています。
「独立」といっても、「コンビニ経営」はやめといたほうがよいと、データをもとに解説しています。
また、やみくもに「独立」を勧めているわけではなく、会社勤めで吸収できることを吸収してスキルをあげることができたら独立してもいいし、そのまま会社勤めでもよいと述べています。

雇われの立場であれば、人間関係やもろもろのストレッサーで悩まされることが多いでしょうが、会社員だからこその利点もあります。ハード面では、パソコンや印刷を使わせてくれるし、また、必要な本や資料も入手できます。また、ソフト面では、何か困ったことがあれば、基本的に「タダ」で教えてもらえます。例えば、パソコンの操作でトラブっても同僚に聞いて解決できるはずです。このサービスを外注するとそんなに安くないです。たぶん、会社を辞めてはじめてこうしたありがたさに気付くのしょう。(出所は忘れましたが、同様のことが他の本に書いてあった記憶があります。)

「社内ベンチャー制度」があれば、雇われの利点を生かしつつ、完全独立に付随するリスクを少なくできるので魅力的です。ただ、最近はこの制度もあまり耳にしなくなりました(ちなみに、"entrepreneur"対して"intrapreneur"と呼ばれるようです。)


「独立するかしないか」の二元論に陥るのではなく、「自分が何をしたいか」ということをベースとして独立するかどうかを選べばよいと思います。ただ、本書の最初で成果主義の功罪に言及しているように、会社に長居しにくくなった時代では、独立への圧力が高まっているでしょう。

2013年5月3日金曜日

最近読んだkindleペーパーバック

kindleのペーパーバックは通勤中に読んでいます。
今回は3冊(いや、電子版だから3ファイル?)まとめて紹介します。
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「Girl of My Dreams」 Morgan Mandel




大まかな筋は以下の通りです。
大金持ちの恋人候補を選ぶためのテレビ番組で企画されたコンテストに、急遽、番組プロデューサーのアシスタントの女の子が人数の埋め合わせのために引っ張りだされます。数合わせのためだったにもかかわらず、順調に最終ラウンドまで残ったものの彼女は、そのお金持ちではなく、実は番組プロデューサーに心引かれていたのです、、、
(注)いつものことですが、細かい部分は違う可能性がありますのでご容赦ください(笑)。

話の筋からすると、ティーンエイジャー向けでしょうか。

ペーパーバックをよく読んでいるかたには、ちょっと物足りないかもしれません。私の場合、英語小説はほとんど初心者なので、ちょうどよい感じです。


人との会話や接触する場面が小説にはでてきます。基本的に小説にはなじみがなかったので、通常であればよく使うのでしょうが、単純だけど知らない単語に出くわします。
例えば"beckon"なんて単語をこれまでほとんどみたことなかったです(恥ずかしながら)。

文脈のなかで単語の意味を記憶したほうが、単語単独記憶するよりもまだ楽なので、ペーパーバック(kindle版ですけど)を読んでいこうと思います。
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「Bra, Humbug! Holiday Tales for Troubled Times」 Lulu Dean


クリスマスシーズンに絡んだ、短編エッセイのような物語です。かなり笑えます。
私の入手したのは「お試し版」だったらしく、全部は読めませんでした。
Humbugはnonsenseやケチなどの意味があります。よく調べてみると、タイトルに入っている「Bra, Humbug!」は、「クリスマスキャロル」に登場する Ebenezer Scroogeが言った「bah, humbug!」のパロディーだったのですね。知りませんでした。(銅メダル英語であれば知らなくてもOK?)
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「How to Date a Werewolf (Rylie Cruz Series)」Rose Pressey 


Werewolf(おおかみ人間)ものです。主人公Rylieは女性なので「狼男」とはいえないです。
Rylieは、通常は普通の人間ですが、感情がコントロールできなくなるとwerewolfに変身します。人間に戻った時に伸びた毛が残るので、常に剃刀をバッグに忍ばせているのには妙なリアリティーを感じました。加えて、服を着たまま変身すると服が破けてしまうとは、、、他のwerewolfものではこの辺のリアリティーがどうなっているかが気になりました。
ストーリーは主人公が「人間」と恋におちるのですが、他の狼男、そして何者かからの脅しも絡んで展開します。
が、ネタばれ覚悟でいうと、十分なオチがない! たぶん、このRylie Cruz Seriesの続編を読まないとわからないのでしょう。ストーリーにあまり関係なかった主人公の親戚も、続編での伏線なのでしょう。1冊でオチがなく続編に誘導するとは、うまい商売をするものです。
読み始める前に、続編まで読むかどうかを決めておくことをお勧めします。

2013年5月1日水曜日

「パブリックスピーキング―人を動かすコミュニケーション術」 蔭山 洋介

プレゼンの技術について興味がありこの本を買いました。プレゼンよりもスピーチに役立つ内容だと思います。

「パブリックスピーキング」の語訳は「話ことば」ですが、以下のように定義されてます。
普段の話し言葉を使って人前で話すこと、またはその技術
スピーチ、プレゼン、講義も広義のパブリックスピーキングですが、「普段の話し言葉」を使う点が特徴です。だからオバマ大統領のスピーチやスティーブジョブズのプレゼンはこの範疇に入りますが、校長先生の原稿を読む朝礼の講話は含まれません。


パブリックスピーキングの構成要素は「演出」「シナリオ」「演技」の3つです。

「演出」に関しては、他のプレゼンテーション本で書かれていることとあまり変わりません(例えば、会場のライティング、マイクの調整など)。


「シナリオ」については、以下の構成が紹介されています。
あいさつ
アイスブレイキング
フレーミング
事実/事件
意見
まとめ
事件での内容の構成が、ドラマツルギー(作劇法)の手法そのものである点は「なるほど」と思いました。すなわち次の順序のようなドラマの流れです。
日常→事件→非日常→解消→新たな日常
また、自分が追体験するように話せば面白くなると述べています。その時さらに、擬音を入れる、実際の言葉をいれる、語尾表現を「ました」ではなく「たんです」とすることが効果的であると言ってます。
スピーチで話す場合に、AをBのようにすると、話し言葉として生き生きするのがわかります。

A
車を運転していたときです。前方の片側2車線の分離線に黒い何かが落ちていました。そこを避けて通り過ぎる際に見たら子猫のようでした。車を路肩に停めてその子猫を保護しました。自宅に連れて帰りましたが、先住猫は威嚇するし妻は反対するしで困りました。しかし、最終的には職場の猫好き同僚が引き取ってくれました。

B
車を運転していたんですね。で、前方の片側2車線の分離線に黒い何かが落ちていたんです。「タイヤが乗り上げたらいやだな」と思って避けて通ったんです。そのときよく見たら、よろよろして歩いていた子猫だったんです。「他の車にひかれたら大変だ」と思って保護したんですが、うちに連れて帰ると先住の飼い猫は「シャー」って声出して威嚇するし、妻は反対するし困りました。しかし、最終的には職場の猫好き同僚が引き取ってくれたんです。ほっとしました。
(注:なお、この子猫保護の話は実話に基づいた構成です。)


「演技」のコツに関しては、プレゼンの基本と重なる部分もありますが、目新しい点もありました。それは、
感情をこめて話そうとするのではなく、自然に沸き起こる感情を使って話せ
という指摘です。そのためには、
1.大げさに表現することに慣れる
2.感受性を鍛える
「1」の例を考えると、「満天☆青空レストラン」の宮川さんの「うまーーい!」です。彼は番組で食べる料理の味について、「うまーーい!」の一言しか言いませんが、自然な感情として伝わってきます。

「2」は、難しそうですが、具体的な方法として「発見と伝達を繰り返す」ことを勧めています。
例として「笑いの感受性」であれば、日ごろから「何か面白いことはないか?」と考えながら過ごして、面白いことが見つかったら(=発見)、それを身近な人に話してみる(=伝達)方法を示しています。個人的には、好奇心を失わないことも大切だと思います。
また、ひとつの専門分野を極めることも感受性を鍛える上で重要と述べています。身近な例を考えてみると、自分の趣味など特定の分野にのめり込んでいるひとが「熱く語る」状況じゃないかと思います。


パブリックスピーキングの技術は、演劇の技術の応用だとまとめることができます。そう考えると、レーガン大統領やシュワちゃんが政治家に転身できたのもわかる気がします。

上述のAとBを比べると、何だかBのほうは「落語」っぽい印象があります。演劇以外に、落語の技術でもパブリックスピーキングに応用できそうですが、誰か(桂文珍とか)落語家がこの手の本を書いていても不思議ではありませんね。