2014年1月12日日曜日

「うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ」平康 慶浩

ざっと線引きすると、サラリーマンで年収300万円のラインが生活苦となるか否かの境界だろう。そうしたエリアのサラリーマン(非正規雇用者を含む)が現状を抜け出すために書かれた本であるが、それ以外のサラリーマンのためのビジネス書としても有用である。

■給与が増えなくなった理由として以下の2点を挙げている。
①人件費がもはや固定費ではなく変動費となりコストとして管理されるようになった。
②転職が普通になった結果、市場原理により給与の相場ができ、転職市場を利用して人材の取替えができるようになった。

■300万円を抜け出すための方法として、会社の状況にあった給与の増やし方が示されている。
「普通の企業」であれば「定期昇給で増やす」、「ブラック『型』企業」であれば「昇進で増やす」、「業績悪化型」であれば「配置転換で増やす」といった具合である。また、ブラック『型』かつ業績悪化型の「二重苦企業」であれば、普通の会社への「転職」をすすめている。


■業種別、職種別に具体的にどうすればよいのかを書いている点が本書の特質すべき点である。(ここでは「専門職」についてざっとまとめる。)
専門職は入れ替え可能であり、その給与水準も転職市場の相場で決まると述べている。(もろに専門職であれば、10年後に食える仕事食えない仕事の「無国籍ジャングル」であろう。)
専門職で給与を上げるヒントは欧米系のファーム(弁護士事務所や会計事務所など)にあるとし、具体的には以下の3つを挙げている。

1.コミュニケーション能力を伸ばす
これにより「太い客」をつかめといっている。言い換えれば「営業能力」ではないだろうか。例えば顧客と仕事以外の付き合いがあるほうが仕事が取りやすいことは自明であろう。

2.希少価値を得る
さらに専門分野に特化する、あるいは語学力を生かすなど。ただ、語学に関しては「英語」が希少価値かどうかは意見の分かれるところでしょう。

3.お客様のところへ行かない
「現場」を離れてマネージャーを目指せといっている。
「マネージャーとしての資質」の定義がかなり面白い。先進的な会社と古い体質の会社の2つの場合の定義をしている。
先進的な会社での資質は一般のビジネス書でいわれるようなことであり、すなわち、引用すると、
・過去を否定せず、新たな発想を提案している
・部下に、ではなく、自分を含めたチームとしての発言をしている
・会議では常に積極的に議題を提案している
で古い体質の会社でのマネージャーの資質を引用すると
・上司の考えに対して異論をはさまない
・部下にサービス残業を命じることができる
・会議で積極的に発言しない
となっている。(毎年の評価で標準以下になっていないことが前提としているが)。
会社の体質で求められる資質が変わる点を指摘しているのは興味深い。上記の例では資質は「変わる」というよりは、もはや「正反対」ともいえる。結局、状況や環境によって求められる資質は変わりうるものであり、特に具体的になればなるほどただ一つの法則として示すのは困難であろう。

さらに人事制度の理解と上司を巻き込むことの重要性にも言及している。
サラリーマン(雇われ人)として生きることを選んだ人には大いに役立つ本である。

繰り返しとなるが「具体的」にどうしたらよいかを業種別職種別に示している点が素晴らしい1冊である。

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