2013年5月5日日曜日

「不機嫌な職場」 高橋克徳+河合太介+永田稔+渡部幹

相互に協力することが少なくなった「不機嫌な職場」に対する考察とその解決案が述べられています。

個人の仕事で手一杯で、他の人に協力することができなくなり、しまいには精神を病む人を生み出すギスギスした職場を生み出す要因は何か、以下の3つを挙げています。

1.仕事が細分化、高度化することにより、部、課、あるいは個人の業務単位内でしか仕事が見えなくなった。
*「タコツボ化」と表現されています。「セクショナリズム」と言ったほうがわかりやすいかもしれません。)

2.社内でどんな人がいるのか、組織内で個人の「人となり」を共有できなくなった。
*「評判情報」が共有が難しくなったと表現しています。協力を要請するにしても、依頼する相手がどんな人間か(仕事以外の面も含めて)知っていれば協力しやすいですが、それができない状況です。

3.インセンティブが効かなくなった。
日本の従来の雇用体系では、金銭面以外にもインセンティブがありました(例えば長期的雇用の保障。)平たく言えば、会社に忠誠を尽くせば何とかなっていたということです。その状況がくずれると社員間での協力も後ろ向きになります。


1.に対しては、以下を提案しています。
  • 共通となる目標や価値観を設定して共有化する(共有化の工夫が大事)
  • 発言や提案に対して壁を作らない、さらにそれらの発言や提案をまじめに取り上げる
  • 特定人しか仕事内容がわからない状況を避け、周りが手伝いやすい環境をつくる

2.に対しては、「会社でのインフォーマル活動を見直す」ことと、さらに活動を機能させるために「面白く」するを提案しています。
具体的には、社員旅行や会社の非公式行事を活用することです。
私の経験でもインフォーマルなネットワークを社内で持っておくことは、仕事を速やかに進めるのに有効です。よく知っている相手であれば、「3」の効力感も高まるでしょう。
一方で、仕事とプライベートをどう切り分けるか(切り分けるべきか)という議論もありますが。


3.に対しては、
これまでとは別のインセンティブ、「効力感という感情を与える」ことが必要である(効力感=手ごたえ=「相手から真っ当な反応が返ってきた」そのときの心地よい感触)
と述べてており、「効力感」は、反応が感謝や認知であればより助長されると述べられています(認知=他人を認める応答=「この人すごいよ」といってもらえること。)そうした例はインターネットの世界で見られます。例えばネットの掲示板で困ったことを書けば、助けてくれる人や情報をくれる人がいますが、彼らの行動の原動力となっているのは金銭的なものではなく、効力感が得られることなど精神的な面が大きいでしょう。

現代は「認知飢餓社会」であるために、「学校や会社よりもネットのほうが楽しく生きがいを感じるといってはまっていく姿はそれを象徴している。」という考察はそのとおりと思います。現実世界が認知を受けにくくなったこと、さらに、ネット上では認知を受けやすい世界であることも要因だと思います。

協力し合える組織として「グーグル」、「サイバーエージェント」、「ヨリタ歯科クリニック」の例が紹介されています。ネット産業のようなクリエイティビティを重視する組織と一般の製造業では状況は異なりますが、参考にはなるでしょう。

「2」と「3」については、職場という内向きな場所だけではなく、例えば起業して独立する場合にも適用できるポイントだと思います。

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