2013年5月26日日曜日

「空気の研究」 山本七平

ここでいう「空気」は、時代のムードとも言い換えられ、「空気」が決定に影響した例として、「戦艦大和」の出撃の話が取り上げられています。どうみても無謀な出撃は、その決定時に漂っていた空気に逆らえなかったためだというのは周知の事実でしょう。

空気は強固で絶対的な支配力を持つ「判断の基準」であり、決定に際しては論理的判断の基準のほかに「空気が許さない」というような空気的判断の基準が適用される、と述べています。

空気の支配を断ち切るには、対象を相対化することが一つだと述べています。逆に言えば、対象を絶対化すると空気の支配が起こるということです。その例として公害問題について、公害対策基本法の改正で「経済の健全なる発展との調和」のくだりが削除されたことを挙げています。すなわち、経済の発展と、公害問題という2つを対立する相対的概念で捉えていたものを、前者を削除することで公害を絶対化してしまい、公害という問題を解決できなくなると述べています。公害が絶対化されると、公害をなくすために工場を全閉鎖しろという空気が支配的になり、仮に工場が一掃され公害がなくなっても、「公害問題」は解決しないということです。

空気が形成される背景として宗教的な点を指摘しています。つまり、一神教の世界では一神が絶対化されているので、他のすべては相対化されるが、日本はアニミズムの世界なので相対化がなく絶対化の対象が無数にあると述べています。宗教的な背景から空気を説明できる点は興味深いです。



今回、かなりの時間を要しましたが内容の理解は正直なところ不十分でした(「臨在感的把握」はキーワードのひとつですが、ピンと来ませんでした)。本書の内容は「「空気」の研究」、「「水=通常性」の研究」、「日本的根本主義について」の3つから構成されていますが、今回は最初の「「空気」の研究」だけです。
まずは、聖書の知識や、共産主義思想、第2次世界大戦での日本の状況についての背景知識を持っていないと内容を理解するのは難しそうです。基礎知識を仕込んでから再度チャレンジしたいと思います。

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