2015年10月11日日曜日

「日本の雇用と中高年」濱口桂一郎

 日本の雇用体系は海外とは違うらしいと気づいたのは、就職してからずいぶんたってからだった。それらは、雇用の期限が無い(=通常はずっと勤める形態)とか、職務内容に関する規定が無い(=やることが規定されていない)、あるいは年功序列的な形態である。しかし、これらの特徴的な雇用形態が生まれたのは、日本国内での経済発展の歴史のなかで生み出されてきたものであることが、この本を読むとわかる。職務給から職能給へ変更したことで、事業構造の変化で余剰となる人員を配置転換し解雇を回避したと述べられている。

 興味深いのは、職務内容が規定されていないからこそ、ひところ騒がれた「追い込み部屋」が合法であった点だろう。つまり、「職務」を規定されていないが故に、「あなたの適性にあった業務はありません」と雇用者側は主張できたということだ。さすがに、世間で話題となった以降は、この問題はマスコミでは取り上げられなくなった。合法ではあるがグレーであり、またこうした行為が「ブラック企業」という烙印を押されることを避けるためであろう。

 かつては就職さえすれば会社が従業員を丸抱えしていた。それは例えば社員旅行や社宅の提供や充実した福利厚生であった。そういう平和な時期も終わり、いまや自分のことは自分で守る時代となったのだろう。加えて、働く場も日本国内に限られるわけではないので、雇用やそれを取り巻く法律を勉強しておく必要があるだろう。


戦後の国内の雇用環境の変遷が学術的に丁寧に振り返られている。

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