2016年9月17日土曜日

「筋金入りのヘタレになれ」島田雅彦

 酒場で放談する形式をとっており、どちらかといえば週刊誌や三面記事的なネタを取り上げている。それでも最後のほうでは、若い人へのこれからの生き方を指南している内容だ。
小説家として著名であるが、実はいずれの作品も私は読んだことがないので、先入観というか、バイアスなしで読んだ。著者のファンであれば、とらえ方が違ってくるのかもしれない。

■男はどうしてやばい女性に惹かれるのか?の部分で、手塚治虫の『ばるぼら』の例が出てくる。
小説家の男が新宿で美人ホームレスを拾ってくる話、らしい。

■理想の老人介護施設とは老人ホームとキャバクラがセットになっているもの、といい、また、これが不謹慎であればキャバクラやナイトクラブが介護サービスを始めればいいと。まあ、それで老人(男性がメインだろうが)が元気になればよいが。ばかげた考えにも見えるがビジネスの分野としてはブルーオーシャンだろう。

■愛する人の排泄物をも愛せるか?のとこで」『今昔物語』の引用がある。好きになった貴婦人を嫌いになろうとしてそのウンコを味見してみたら以外に芳ばしく、ますます好きになった話らしい。著者は高校の時の古典の最初の授業で習ったというが、私ははじめて知った。
 しかしこれについて調べてみると、話が違っているようで、用を足す容器にあらかじめ「偽の」ウンコみたいなものを仕込んでいたらしい(まとめ参照)。(うーん、やはり元の出典をみないと、いいかげんなことが書いてある場合もあると思った次第だ。)

■若い人が海外旅行にでなくなったことに対して、旅にでることのメリットとして、海外にでて、日本ではありえない価値観などに触れることにより、自分がローカルな習慣や文化のなかに縮こまっていることに気づくといい、そうした発見があることで「旅は財産になるし叡智になる」といっている。日常のなかでの経験値の蓄積は限られるので、旅にでることや違った場所で生活することは人間の幅を広げられるのは間違いないだろう。

■働き方について、日本は非正規雇用という奴隷階級を生み出したとか、会社で働いて偉くなる人は倫理的に正しいことをしてきたというよりは会社の論理に沿ったひとだとか、一面では新しいこともあり、ほかで言われていることでもある。AIが進歩して最後に人間にできることは何かなどの考察もあり、戦争するかしないかの判断もAIに任せれば間違いないだろうと。「間違いを犯すこと」は、人間らしさの一つ(だから「間違った相手」と結婚したりする)だが、AIが人間に近付くということは、そんなエラーをも取り込むことなのかと、不思議に思う。

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