2013年12月28日土曜日

「ノマドと社畜」谷本真由美


「ノマド」はいわずと知れた「ノマドワーカー」のことで、例えば、プロのブロガーがよく知られた例である。彼らはパソコンとネット環境さえあれば、物理的に固定された場所(事務所)とは関係なく、遊牧民のごとくあちこちで仕事ができる。
こうしたノマドが人気となっている風潮に対して、著者は、「現実はそれほど甘いものではない」ことを述べている。

ノマドの基本となるのは、その人のプロとしての技量であり、あちこちで自由に働くという意味で、フリーランサー(自営業)となんら変わりがない指摘はもっともである。で、その世界は例えるならば宮大工や畳職人の世界と述べている。いわゆる「職人」である。

ノマドになりたい人がやるべきこととして、以下の4点が挙げられている。

  1. 実際にフリーランサーとして5年や10年働いているひとに話を聞いて実態を知る
  2. フリーランサーとして必要なスキルや技能を探して身につける
  3. フリーランサーとして働くための基礎知識を身につける
  4. 英語を身につける

「4.英語を身につける」ことを勧める理由(自分を差別化できる.サービスや商品を世界中に売り込むことができる.日本以外で働ける.)を挙げているが、これらの理由はいまさら言われるまでもないだろう。それだけ読者のレベルが低いと考えているのだろうか?あるいは著者がこれらの英語を身につける理由を説明しないとならないレベルの若者と接してきた経験からだろうか。


ノマドあるいはフリーランサーで生きて行く世界は、実力勝負の厳しい世界である。しかも、地球上のどこであっても闘える能力が必要である。以前に紹介した「10年後に食える仕事食えない仕事」の分類のなかの「無国籍ジャングル」と同じだ。

「社畜」については、特に日本特有の雇用形態と欧米(ここでは著者の詳しい英国の状況)と比較し、ノマドの対極にあるものとして挙げている。日本企業では、通常は職務の範囲の細かい契約がない(少なくとも自分の勤務先ではないし、大多数がそうだと思う)。だから、付き合いで残業したり、人の仕事を手伝うことが暗黙のうちに要求されたりし、なんとなく頑張ることが評価されていたりする。もちろん、こうした業務範囲の「あいまいさ」が、過去の日本経済の発展を支えてきたことも否めない。ただし、終身雇用や年功序列といった旧来の制度があったからこそ成り立っていたと思われる。
本書でも「ノマド的な社畜であれ」と言われるように、仮に現在が社畜的なサラリーマンであっても、いつでもノマドとして飛び出していける準備をするのは現実的な対応であろう。ブラック企業ではまずいが、会社で無茶苦茶なことがあったとしても、それで安い給料しかもらえないと考えずに、お金をもらって貴重な経験を得ているいう見方もできる。また、やり方によっては上述した「ノマドになりたい人がやるべきこと」の4つのうちの3つぐらいは社畜としてもできるかもしれない。

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