2013年2月23日土曜日

「選択の科学」 シーナ・アイエンガー


「生きていく上で日々行っている選択の判断は、必ずしも合理的な理由に基づいてはいない。選択の結果、どういう人間にみられるかを基準として選択が行われる場合もある。従って現在のその人となりは、それまでの選択の結果の蓄積である。」と述べています。

著者は、ジャムの試食と売上の実験を行い、試食に出した商品の選択肢が多いと逆に売り上げは減少してしまうことを示しています。実際に商品を買う際に、種類が多すぎるために選ぶのが面倒になって買うのをやめることを経験した人も多いのではないでしょうか。(そこには科学的な裏付けがあるということです。)

選択も場合により負担ですが、選択を他者に託すことで、選択の負担を減らすことも可能である例として、「宗教」の例を挙げています。「選択を託す」のは、選択の幅を減らすことではないので抵抗がないのでしょう。宗教の役目として、「選択を託す」ことを指摘しているのは新しい見方だと思います。

「コカコーラ」と「ペプシ」のどちらを選択するか、あるいはミネラルウォーターの銘柄選択についても実験データに基づいた記述があります。条件反射的な連想を促すきっかけ(プライム)が、われわれの精神状態やその後の選択に影響を及ぼす(プライミング)ことが述べられています。サンタのイメージをみるとコーラが飲みたくなる理由をプライミングで説明しています。そう考えると、「自分の意思で」選択したと思われることでさえ、プライミングによる可能性もあり注意が必要です(プライミングに影響されていることさえ気付かないのが問題であると著者は指摘してますが)。認識されないほど短い間に映画フィルムの中に広告を流す「サブリミナル広告」が話題になったことを思い出します。
余談ですが、潜在意識に働きかける意味では、マイナスな発言を控え、プラスな発言や口癖を心がけるのは、あながち科学的に間違いのないように感じます。

選択について述べられていますが、選択にまつわる心理学上の知見にも触れられています。「いかにモノを売るか」を研究するには、心理学の知見が欠かせないです。新書よりも値段の高い本ですが、量・質ともに読み応えのある1冊です。




著者は高校の時には全盲になってしまったハンデにもかかわらず、大学教授にまでなったことはすごいですね。

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