2013年3月23日土曜日

「話せぬ若手と聞けない上司」 山本 直人


この本が書かれたのは2005年です。それから8年余りが経過していますが、新入社員と彼らを受け入れる側との関係はあまり変わっていない気がします。著者は、博報堂で人材育成に携わったときの経験を元に、若手社員、上司の世代間のギャップを埋めるための提言をしています。


上司(というか、指導的立場の先輩社員)に対しては、若者を「理解できない」けれど「認める」ことはできるから歩み寄っていけばよいのではないかと述べています。

一方で、若手に対してはいくつかの具体的な助言をしています。
例えば、「身銭を切って遊べ」、「先入観を捨てて、疑え」、「相手の立場に立ってものを考えろ」「無駄なことをやってみろ」などです。



また、学生時代(すなわち社会人になる前)に理不尽経験を適度に知っていることの大切さを指摘しています。理不尽の経験の少ない、理不尽免疫を持っていない者に対しては、
「現実の世の中、ビジネスにおいては努力と結果は全然比例しない。『やればできる』は大嘘。報われない努力は山ほどある。」
「それでも努力したほうが成功確率は高いから、努力したほうがいい」
と述べています。
もちろん、ビジネスの世界に限らず、世の中、理不尽な出来事は珍しくないです。例えば「運の良し悪し」のように自分ではコントロールできない要素があると認めるにしても、努力することに意義はあると思います。


読書の重要性についても述べています。
インターネットと比較して本が重要なことについて、佐野眞一氏の話として以下のように紹介しています。
「インターネットは空中戦のようなものだから大きく情報をつかむことはできる。でも、そこにはいろいろな漏れがある。本は歩兵か地を這うようにして集めた情報がつまっている。空中と地上と両方から情報を集めなくてはいけないと思う。」
この話を聞いた新入社員から「本の意味」を聞かれて、著者は、以下のように答えています。
「検索できるということは世界中の人がその情報に触れられるということでしょ。だからインターネットでわかった情報には優位性はないと思うんだ。」
「ネットの情報はみんなが同じように消化していくけれど、本の情報は人それぞれに加工できるんだよ。」
そういえば、評論家の佐高信氏も同じく、「ネットで検索できるような情報はだれでもアクセスできるのであまり価値がない」と言っていたように記憶しています。

ネットの情報といっても「ネット特有の情報」と「ネットを媒介して利用可能な情報」に分けて考えるべきだと思います。前者では例えばWikiのように信頼性が怪しい情報を信用してよいかという問題が付きまといます。しかし、後者では、本やその他の印刷物(研究論文や報告書)がネットを通して入手できる点から言えば、メディアが紙や印刷物から電子媒体に変わっただけなので、前者とは区別して扱われるべきでしょう。
ネット時代で大切なことは、玉石混淆の情報から、いかにまともな欲しい情報を入手できるかだと思います。


本書は、年寄り(=上司)にとっては会社生活のなかで若手に歩み寄る手がかりを与えてくれるでしょう。また、若手にとっては「会社の中の歩き方」を知るために役立つとともに、世渡りのコツを伝授してくれるのではないでしょうか。

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