2013年3月17日日曜日

「「上から目線」の構造」 榎本 博明

これまでは「上から目線」というと、同じ立場あるいは下の立場の者が、高い位置からものを言う場合に使われていました。しかし、上の立場から言われた場合にも、その上の人に向かって「その上から目線やめてください」という事例があるようです。上から目線の立場と、ウエから言われるシタの立場(「上から目線をやめてください」という若者)、これら双方の立場からの分析を心理学的な側面から行っていますが、後半では現代の若者の変化について考察しています。(前に紹介した「上から目線の時代」とは切り口が違っています。)

「上から目線」の立場としては以下の2つに分類しています。
1.親心による上から目線
この場合は、相手に対する助言や忠告なので、ほとんどが「言い方」に問題があるために反発されるとしています。その一方で、本当にその「立ち位置」が適当であるかも考える必要があるかと述べており、例えば会社で単に先輩だからというだけではなく、その人の能力も「上」であることが前提であるとしています。

2.コンプレックスによる上から目線
部下に対して過剰に上からものを言い、尊大な態度をとる上司がその例です。自尊心の低いあるいは劣等感の強い人ほど威張り散らす傾向があることを考えると、それが「上から目線」の原因となっているのは理解しやすいです。

「上から目線やめてください」と反発する側の心理としても同様に、自尊心が低いことを挙げています。つまり自分に自信がもてないために、相手の忠告に対しても素直に受け入れられずに反発する状況です。



親心からの上から目線に対して、それがわかっていながらも反発を示す一方で、かまってほしい姿勢を示す若者の背景には、日本文化の特徴であるみんなを同じように扱おうとする「母性原理」があるとしてます。
また、この日本文化の影響のほかに、幼いころの近所での遊びの経験が無くなったことによる現代の若者の人との付き合い方(距離の取り方)の変化が影響を与えている点も考察しています。

「今の若い者は、、、」の言葉は昔から変わりませんが、ひきこもりやニートが目立ち始めたころ以降の若者の変化に、著者は危機感を抱いているようです。私も既に「若者」のカテゴリーから外れていますが、「若者」といわれる世代はどう考えているか・感じているかに興味があります。

「上から目線」という言葉は一種の流行りな気がします。そのくくりを分解するといろいろな側面がみてとれます。









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