2014年8月10日日曜日

「働かないオジサンになる人、ならない人」楠木新

「働かないオジサン」と言われて、想像するオジサン像は人それぞれかもしれない。ここでは、サラリーマンの職場における「働かないオジサン」の分析と、そうならないためはどうすればよいかを示している。(なお、同じ著者の「人事部は見ている」を以前に紹介した。そちらは「会社の歩き方」とも呼べる内容だった。)

面白いのは、「働かないオジサン」の特徴として、「いい顔で働いていない」ことを指摘している点である。本書で類型化されているタイプでいえば「無気力タイプ」を想像するとわかりやすいだろう。

働かないオジサンを生み出す構造的問題が日本で特有なものだとし、その理由として「新卒一括採用」と「ピラミッド構造」の2点を挙げている。一般的に日本では、まとめて採用し、しかもその際にみんなが「同期」としてスタートすることになる。引き合いに出されていた銀行の例を考えるとわかりやすいだろう(ドラマ「半沢直樹」の感じですね)。また、そのなかではピラミッド構造のためすべての人が、課長や部長や社長になれるわけではなく、そうならなかった人は「働かないオジサン」化する可能性がある。この仕組みはサラリーマンの世界特有というよりは、官僚の世界のほうが顕著であろう。だからこそ、上位のポジションに登れなかった時点で関係省庁や関係団体に「天下る」システムができたのだろう。

日本的雇用の慣習の特徴として「メンバーシップ契約」を指摘している。会社と従業員は所詮「契約関係」でつながっているが、日本では被雇用者間でも、あたかもクラブのメンバーのごとく相互に協力することが前提となっている。これは「契約」とは文面化されてはいないが、入社面接では「みんなとうまくやっていけること」が前提となっている点を考えると理解できる。だから、定時になってもみんなが帰る時間でないと帰らないとか、飲み会には参加するとかいう傾向を招くのだろう(今の20代の世代では変わっているかもしれませんが、私の世代ではそうでした)。

これらの考察で、少し残念な点は日本以外の雇用状況との比較が十分でないと感じられる点である。もしも著者が外資系あるいは海外企業での経験があれば、さらなる考察ができたのではないかと思う。


40歳で遭遇する、組織で働くことの意味に悩む状態を「こころの定年」と呼び、人生の定年(死ぬとき)、就業規則上の定年と分けていることは興味深い。この「こころの定年」に正面から向き合っていない状態が働かないオジサンを生み出していると考察している。

最終章では「働かないオジサンにならないための7カ条」が示されている。第4条の「師匠を探せ」、第5条の「お金との関わり方を変える」は、他の本でもよく言われることだ。つまり、よいメンターを見つけろとか、仕事に直接関係しない飲み会では経費を使わずに身銭を切ろとかいうことである。


想定される読者は若いサラリーマンでしょうか。働かないオジサンへの対処法も記述してあるので、実用性はあるでしょう。
現在の20代が、働かないオジサンとなるかもしれない年代までサラリーマンとして勤めているかは疑問ですが、今、見られるそうしたオッサンを反面教師として学ぶ点もあると思います。

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