2012年12月23日日曜日

本:仕事に生かす〈論理思考〉

著者は経営コンサルタントで、この本は「このまま勤め人をやっていてよいのだろうか」といった疑問を感じた際に役立つと思います。「楽しく悩む方法」も記述してあります[p99]。
以下、「3点発想」と「秘書の知恵」について紹介します。

■3点発想[p54]
「ヘーゲルの弁証法的思考」では固いので著者はこう呼んでいます。
具体的にAという意見に接したときに、以下のように考えよ、としています。
 ①その意見は常に例外なく正しいか?
 ②前提条件にあいまいな部分はないか?
 ③アンチAはどのように表現できるか?
 ④AとアンチAを統合するとどうなるか?
Aの視点、それに反するアンチAの視点、そしてそれらを統合する視点で「3点」です。
賛成か反対かなどの2つを提示されると、それ以外の選択肢がない錯覚に陥る危険性があり、交渉の技術でも使われていますが、その手にはまらないためにも有効な発想だと思います。小泉元首相の郵政民営化に賛成か反対かのキャンペーンを思い出します。

この3点発想に対するトレーニング法には以下の3つが示されています。
 ①3つある、と切り出す[p61]。
例えば、スピーチを頼まれて何かいうときに、とりあえずは3つの項目がなくても「言いたいことが3つあります。」と切り出すことが勧められています。で、まあ3つなくても先に言っちゃって考えろというノリです。それによって論理的に話ができるようになると説いています。

 ②3つのキーワードを意識して傾聴する[p64]。
話しを聞く際に、Yes、No、そしてSoWhat?を意識することが勧められています。相手の話に賛成できる部分、反対あるいは疑問に感じる部分、これらのYesな部分とNoのを選り分け、そこからどのような結論が得られるのかを考えるという流れを意識しろと言っています。

 ③3つの要素でキーワードを作ってみる[p65]。
物事は3要素で成り立っていることが多いので、行動指針などでオリジナルの3原則をつくれば人にも伝わりやすいし、同時に作り手にとっても思考訓練となると言っています。具体例として、
 「真・善・美」(プラトン:哲学者)
 「清く正しく貧しく」(アウグスティヌス:神学者)
 「edge, energy, empowerment」(ジャックウェルチ:GEの元会長)
が挙げられています。
 そういわれれば、
「心技体」、「守離破」などは3つの要素をコンパクトに表していると思います。かつては3高(高学歴、高収入、背が高い)というのが話題になりましたが、マスコミが作ったわかりやすい概念でした。同じ路線でいくと3S (整理・整頓・清掃)が社会人にはなじみがあるかと思います。余談ですが、ネットで検索すると「3S政策」なんてのもあったのですね。
「Sex & Drugs & Rock’n Roll」も3要素といえますが、3高と同じく語呂のよさ重視と考えられます。

■秘書の知恵[p70]
秘書が役員からの指示にどう従うかの指針の話が紹介されています。
で、それをそのまま引用すると、
①間違いのなさそうな指示、急を要する指示にはすぐに従う。
②朝令暮改になりそうな指示、急を要さない指示はしばらく寝かせる。
③感情的になされた指示、その場の勢いによる雑言は聞き流す。

 これらの指針は、私の個人的な経験上、そのまま、上司の指示にいかに従うかにも当てはまります。特に、指示を寝かせるかどうかの判断は重要で、すぐに対応しなければならない指示は寝かせてはいけないし、また、寝かせるべき指示にすぐに対応すると、結局やる必要がなかった際には「無駄」に時間を取られます。少なくとも同じ指示を3回以上されると、それは上司の思いつきではないので、対応が必要です。②か③かの判断はよほど上司が優れていなければ部下の能力に依存するので、それなりの訓練や才能が必要だと思います。

経験上、この「秘書の知恵」は生きる上で大切な技術ですが、果たして学校教育で得ることのできる知識であるかはわかりません。世の中の「グレーゾーン」(英語ではgray area)を学校で教えるのは
難しいでしょうね。

悩める(若き)勤め人にお勧めの1冊です。





0 件のコメント:

コメントを投稿