2015年3月1日日曜日

「本なんて読まなくたっていいのだけれど、」幅 允孝

 基本は、本の紹介本だが、著者は「ブックディレクター」という仕事だけあって本に対する愛情がひしひしと感じ取られる内容だ。一冊の本を紹介するのではなく、その本とつながりのある本を関連付けて紹介しており、相当量の本を読んでいなければこうしたことはできないだろう。

 その場所にふさわしい本をどう選んで、どう配置するかが著者の仕事であるが、「紙の本」に強くこだわっているのではない点は興味深い。すなわち、紙の本であれE-ペーパーであれ道具に過ぎず、「何に載っているテキストを読むかではない。読んだ情報を活かし、日々の生活のどこかの側面を一ミリでも上に向かせること。」と述べている。
 それでも紙の本が電子書籍に勝る点として、「読み戻る操作」と「情報量(特に日本語に関して)」を挙げている。

 著者の子供のころのエピソードも紹介されている。近所の本屋で本をツケで買えるといった環境で育ったようだ。本の紹介だけではなく、著者の生い立ちや背景を知る上でも面白い。また、本の地産地消である「地産地読」の、城崎温泉での取り組みについてこの本で初めて知った。その地域ならではの小説と、さらにその小説がそこでしか読めないという形態は、巨大なビジネスには結びつかないかもしれないが、ユニークな着眼点である。

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