2015年3月22日日曜日

「本の力」高井昌史

本書の副題は「われら、いま何をなすべきか」だが、ここでいうところの「われら」とは、「書店関係者」を指しているのだろうなと思う。なぜなら、著者は紀伊国屋書店の社長だからだ。

出版市場が縮小している状況のを引き起こした原因として4点を挙げている。
  1. 少子化
  2. 読書離れ
  3. ネット・スマホの普及
  4. 公共図書館の貸出し増加
4番目は、書店業界人ならではの分析といえるだろう。これを原因としている根拠は、かつては公共図書館に置かれていなかった新刊や人気作が現在では貸出しされるようになったためだとしている。
図書館ユーザーとして言わせてもらえるならば、本を買っても置き場に困る個人的な事情があり、日本の住宅事情にも問題があるといいたいところだ。

電子書籍については、特にamazonの寡占化戦略に著者は否定的だ。その態度は同じ業界の競合という視点だろう。ユーザーの視点に立てば、amazonは至極便利であり、むしろ出版業界がこれまでの業態にこだわることこそが問題だろう。

出版のコンテンツとして日本のマンガ(ポップカルチャー)を、映画配給のように「世界同時発売」といった形態で売り出すべきだという提案をしている。が、これぞ正ににネットを使った方式そのものであり、「出版を活性化できるのか!」とツッコミを入れたくなった。

本書の終章では「私を形作ってくれた本たち」として、著者のおすすめ本を紹介している。読書の意義として「読書は忘れた頃に知恵となる」といっている。そうかもしれない。だったら、電子書籍でもかまわないんじゃないか? コンテンツこそが重要で、媒体にこだわりがない立ち位置は、ブックディレクターに近いだろう。


そうはいっても紙媒体の本のほうが好きだ。ただし、生まれたときからネットやタブレットのある世代は紙媒体にどの程度親近感をもっているかは興味あるところだ。

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