2013年9月23日月曜日

「マネジャー13の大罪」 W.スティーヴン.ブラウン

以前に、「マネジメントとは何か?」と問う上司がいました。彼は「部下を管理すること」と信じていたようで「マイクロマネジメント」を頭に描いていたようでした。「それは違うんじゃないか?」という単純な疑問から買ってみた本のうちのひとつがこの本でした。

この本の初めのほうに書かれてますが、「こうすればうまくいく」という視点ではなく、「こうしたらダメなんだ」という視点で語られている点が、少し変わっています。「過去の成功例をトレースしても普遍的でないことが多いが、過去の失敗例は共通して使えることが多い」というのは同感です。大体、「成功の法則」は、後付け、すなわち、過去の成功を後で説明するから成り立つと思われるからです。

その13の大罪(原題では13 fatal errors)とは、以下です。
1.結果に対して責任をとらない
2.部下の育成を怠る
3.やる気を起こさせない
4.組織内での立場を忘れる
5.部下と1対1で接しない
6.利益の重要性を忘れる
7.問題点にこだわりすぎて目的を見失う
8.部下との間に一線を引かない
9.目標達成基準を設けない
10.部下の実務能力を過信する
11.部下のたるみに目をつむる
12.成績のよい部下だけに目をかける
13.アメとムチで部下を操ろうとする
「4.組織内での立場を忘れる」の「立場」は、「マネジャーであれば、経営側の立場でいる」いう意味です。この章では、「代名詞病」という面白い表現がでてきます。「代名詞病」とは、組織内の上層部や経営側に対して「彼ら」という言葉を使う傾向であり、本来であれば「私たち」という代名詞が使われなければならないとしている点です。
日本語の場合には、主語が省略されるのがむしろ通常なので、英語ほどは「主語」が意識されません。しかし英語であれば、その話し手の立場が主語で示されなければならないので、なおさらマネジャーは経営側であることを忘れてはいけないと考えられます。

「5」は、個別に部下を管理する重要性を述べています。「グループマネジメント」は、単にマネジャーが手間を省けるという長所しかなく、時間や手間がかかっても「個性尊重のマネジメント」が必要なようです。一言で「部下」といっても、人間それぞれ能力や考え方、ものの見方など違うので、個別に接して、管理のやり方を変える必要があるのは当然でしょう。そういった、相手によってやり方を変える必要があるからこそ、マネジメントの難しさがあると思います(画一的な方法があれば、マネジメント能力の優劣は人によってほとんど変わらないことになるでしょう。)

1対1で向き合う重要性がある一方で、部下と近づきすぎて仲間になるのはNGであるというのが「8」です。社員パーティーやクリスマスパーティーで部下と一緒に楽しんでもよいが、その最中でも職業的関係、ビジネス上の関係を忘れてはいけないと述べています。
では、日本の「ノミュニケーション」はどうか?飲み会の席楽しく飲むのはOKでも、マネジャーは部下とは一線を画す(*)意識を強く持つべきなのでしょう。

「11」では部下の仕事が不満足である場合に、それを看過することなく対処することが述べられてます。具体的な対処内容は、一般的なビジネス書に書いているようなこと(人前でなく1対1で対応するとか、感情的にならないとか、具体的な問題点を指摘するとか)です。だから「8」の一線を引くことができなくなると、感情的に甘くなり「11」に陥るのかもしれません。



原書は1991年に発刊ですが、内容的には現在でも通用するものが多いと感じました。

---------------------------------------------------------------------------
(*)「一線を画す」を英語でどう表すかが気になり、Weblioで調べてみました。ほぼ、そのままに、“draw the line”と表現できるようです。
draw the line : (idiomatic) To set a boundary, rule, or limit, especially on what one will tolerate.
例文としては、
We must draw the line between public and private matters.(公事と私事を区別せねばばらぬ)

0 件のコメント:

コメントを投稿