2014年7月21日月曜日

「逆境経営」 桜井博志

日本酒の「獺祭」を作っている、山口県の旭酒造社長が著者である。ほとんど廃業の危機にあった酒蔵を急逝した父親から引き継いで、そこからどのようにして持ち直したかという内容だ。

かつて日本酒は地域で消費されるのが通常であったが、東京を市場としたマーケッティングや、さらに、海外へと展開を図っている点が、これまでの地方酒造会社とは異なる点だろう。また、その方向性として、海外に合わせた品質(味)とするのではなく、あくまでも「日本酒」としての味は変えないとしている点が経営方針の特色だろう。世界展開している食品メーカーの例をみてみると、世界ブランドとして同じであってもその味をローカルにカスタマイズしていることが多い。(たとえば日本茶のペットボトル飲料で、甘味料が入っているものなど海外で見かける。)どういった戦略をとるかは経営として重要な点であるが、旭酒造のぶれない「日本酒」が世界で通用するのか、今後を見守っていきたいものである。

日本酒の製法に関しても、これまでの杜氏制度から、自社の社員が酒造りするシステムに変えたり、また、年間を通じて酒造りを可能なやり方を導入したのは、地方の酒蔵としては画期的だ。ただし、これも、経営の危機からの逆境から生み出されたことである。「杜氏がいないなら自分たちで、職人しかできないことであればマニュアル化し指標を明らかにし品質管理する」という路線は、まさに「だれでもできる」ための仕組みづくりといえるだろう。今後、製造規模を拡大するらしいが、これらの管理手法があってこそ「拡大路線」が可能だと思う。なぜなら、小スケールの生産で、管理を「経験と勘」に頼っている場合、同じ味をスケールアップで出すのは難しいからである。

「いいものをつくる」という理念に加えて、「どこで売っていくか」を考えている点(=地方ではなく、お東京や海外を販売先としている点)で、経営のセンスがあるのではないかと思う。

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