2015年7月12日日曜日

「ビジネスマンのための「幸福論」」 江上剛

 「ビジネスマン」と言われたとき、イメージされやすいのは理系よりも文系で、いわゆる「銀行マン」(*1)を例としてあげることができるだろう。ちょいちょいテレビで著者をみたことがあるが、その元銀行マンであり現在は作家である。したがって、タイトルの「ビジネスマン」とは一般的なものというよりは「銀行マン」であり、銀行で長く勤めた経験から、どのようにそこで生き延びていくかを説いた内容と言えるだろう。

各章で書いていることはかなり具体的である。上司としての心得の一つとして、
人を活かして使うためにはまずほめること、そして長所をみつけることだ。(p76、第2章人間関係(上司と部下))
と述べている。ひとの悪いところをみつけるのは簡単だが、よいところを見つけるのは相対的に難しくなる。上下関係に限らずに役立つ指摘であろう。


社内の派閥に属するかどうか?に対して、自身が銀行時代に無派閥であったことの経験から、派閥に属すべきで、しかも徹底して属せよという「毒皿路線」(=毒を食らえば皿までも)を勧めている。(p98第3章人間関係(社内と社外)。派閥が沈めばそれとともにする覚悟が必要だが、どこかの局面では引っ張りあげてもらう必要もあるので、妥当な考えかもしれない。


「第4章 出世と左遷」の「左遷された時に…」で、そのときは「本を読んでろ」ということを著者は言われたようだ。(p117)。要は、時間があるならば勉強でもしていろということだろう(今ならばネットで何かできるかもしれない)。「左遷こそチャンスだ」と締めくくっており、ある局面では左遷だと思えても最終的には偉くなった人の例を挙げている。「人間万事塞翁が馬」どおりだと述べている。


結婚について、
結婚とは最初は情熱だが、途中からは忍耐になる。(中略) いい結婚、いい結婚相手とは、この忍耐に見合うか、だと思う。(p165、第6章結婚と家庭)
と、おおよそ一般的な意見だ。経験者ならば同感なのではないか。


管理職の憂鬱については、なぜ管理職になると鬱病になることがみられるかについて触れ、そのように病んでしまうことを防ぐためには、
管理か営業か、どちらかを選択しよう。そして選択したら、片方の手を抜こう。(p193、第7章ビジネスマンのゴール)
と自己の経験から提案している。もちろん「手を抜く」のは力の入れようを調節する意味合いだろう。要はどっちも全力で取り組むと破綻するというわけだ。管理と営業の双方で力を発揮するのは通常の人には難しいので、極めて現実的な提案といえるだろう。
 世間を見渡すと、以前は管理職にならなければ昇給が見込めなかったが、専門的な分野で管理的な職務でなくても昇給できる制度がソニーでは導入されたらしい(*2)。そういう意味では管理と実務の板ばさみ的な状況は以前よりも少なくなる環境に変わってきたのかもしれない。

現在の銀行マンを取り巻く状況がここ10~20年でどの程度変貌したかわからないが、これから銀行マンとしてのキャリアを目指す人にいろいろなことを教えてくれる本である。



(*1)銀行マンに対応する、ジェンダーフリーの言葉ってあるのでしょうかねえ。ビジネスマンとは言わずにビジネスパーソンが男女平等を考慮すると適切なんでしょうね。
(*2)ソニーのジョブグレード制度。しかし、リンク先の内容(「大幅降格、給与ダウン…ソニーの「課長」に起こっていること」)をみると固定費削減が目的のようで、職場の士気が上がるのかは疑問です。

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