2015年6月14日日曜日

「持たない暮らし」下重暁子

 著者の言い分はよくわかる。古いものをできるだけ修理して大切に長く使いましょうだとか、食材はなるだけ顔の見える売り手から買いたいだとか。ただし、世の中のひとすべてが経済的に恵まれているわけではないので、そうした「暮らしぶり」に、経済的な視点が必要である。例えば古いものを修理して使うよりかは、買いなおしたほうが安かったり、電化製品であれば買い換えた新製品のほうが電気代が安く済む場合がある。購入した本をそのまま持っているよりも資源ごみとして戻したほうが自然に対するインパクトも小さいかもしれない。電子書籍であれば元から紙さえ消費しない。
 「いい食材を選んで買う」ことは、誰も異論を挟む余地は無いが、誰もが経済的に恵まれているわけではなく、有機栽培で無農薬で、高い野菜なんかに躊躇なく手出しできるのはそれなりの一部の富裕層に限定されるだろう。

 全体のトーンとして、高齢者にみられる「昔はよかった」だとか「今はパソコンやネットに頼りすぎているから、あまりよくない」という感じが受け取られる。しかし、いい考え方だと思ったのは、「本当にいいもの」だけを買って、「ちょっといいもの」は買わないという点だ。特に服に関してみると「これってちょっといいわよねえ」と言って買う口実にはしないのは、そうかなと思う。結局、買ったがほとんど着ないという事態に陥りがちだろう。
 「本当にいいもの」を購入する際の問題は、「高い」点だが、長く使えることが期待できるので長期的にはそれほど高いともいえないだろう。


自分も持たない暮らし方を目指したいが、そうした生き方の広がりが国の経済的発展にはマイナスになるのではないかと心配したりもするのであった。

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