2018年2月4日日曜日

「雨月物語」 上田秋成(佐藤至子編)

古典といえば、とっつきにくいものである。そこで、読みやすくした形式として提供されているのが本書である。序文の解説に書かれているように、「美しくも怖ろしい物語たち」との表現が、この本の内容を端的に表現しているといえるだろう。

本書の構成として、現代語文、原文、解説が、適当な区切りで配列されている点が非常に読みやすい。「日本古典文学全集」では、ページ内で、上の方に解説や注、真ん中に原文、そして下1/3の部分に現代語訳と配置されているが、これは気楽に読むにはちょっと辛いレイアウトであると感じる。

内容は9つの短編からなっており、それぞれを読むのはそれほど時間を要しない。話の落ちの怖さでいうと、「吉備津の釜」が一番であろう。主人公は妻の怨霊を避けて42日間籠っていたが、最後の日の夜明けを誤って家からでたために、怨霊に命を奪われる。しかし死体が残されていたわけではなく、ただ血のあとと、主人公の男の髷だけが軒下に引っ掛かっていたという。

お化け物あるいは怪奇小説の類であるが、解説によれば、中国の古い話が下地になっているものもあるらしい。


「ビギナーズ・クラシックス日本の古典」のシリーズのなかの1冊で、2017年末に刊行されている。解説もわかりやすく、元の雨月物語に興味を掻き立てられる。本書の本文の随所に挿入されている解説やコラムは佐藤氏の雨月物語に対する見方をうかがい知れるもので、物語の面白さに加えて読み物として楽しめる。

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