2016年7月9日土曜日

「孤独の価値」森博嗣

 昔であれば孤独は死活問題であった。つまり、お互いが助け合っていかなければ生きていけなかった。だからこそ、「みんな仲良くしましょう」とか「友達を沢山つくりましょう」という学校で教えらててきた理屈は合理的であった。しかし、そうしたことが「世渡りに有利」だと単刀直入に教えられてこなかったのは、「学校」という枠組みがあったからかとも思う。

 現代では孤独であっても生きていけるし孤独に対して寛容な世の中になった。ひきこもりが容易な時代といえるだろう。一方、ネットの普及により、なんだかいつでもつながっている時代になってしまった。「つながりがないこと」が「さびしい」こととしてネガティブにとらえられている風潮がある。モノと同じで「つながり」さえもが商売の対象となっているのが現代だ。本書は、孤独だからいけない、あるいはむやみに「絆は大切だ」ということに疑問を投げかけている。孤独に対する否定的な感覚は、本書で指摘の通り、メディアが作り出した点が大きいだろう。

 最後の章で、「孤独を受け入れる方法」が紹介されており、創作活動や研究が挙げられている。また、もっと簡単なこととして「無駄なことをする」ことが勧められている。で、その「無駄さ」に疑問を持つことが大事なことなのだと。
著者は研究者出身であるし、自身も孤独肯定派であるという特殊要因もあるが、孤独の良しあしを考える上ではおもしろい内容だと思う。孤独に対するとらえ方は、メディアの影響は否定できないが、生まれ持った性質(パーソナリティ)も影響するだろう。


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