2016年3月7日月曜日

「こころ」夏目漱石

言うことがコロコロと変わるヒトには困らされるものである。特にそれが会社の上司であるとストレスの要因となる(まさに自分の経験でもある)。そうはいっても、一般的に「首尾一貫」して言っていることや、やっていることが不変なヒトはどれくらいいるのだろうか?「ブレない」ことは評価されることであるが、度が過ぎると「融通のきかない」あるいは「軌道修正のできない」状態となり、それはそれで危険である。ブレすぎると「優柔不断」となり、それはそれで困ったことだが。

この小説は「上・中・下」の部分に分かれており、そのうちの「下」では「先生」と呼ぶ人物が、その過去を「私」への遺書という形で語っている。その中では、若いころの先生とその友人Kとの関係、そしてなぜKが自殺したのかが明らかにされている。先生とKは一種の「恋敵」となっていたのだが、そのために親友ともいえるKを追い込んだ。、「精神的に向上心のないものは、馬鹿だ」と常々言っていたKのブレ、つまりK自身が精神的に向上心のないものと確信させるように仕向けたのである。
ある意味、頭でっかちになると頭(脳)がすべてのようになり、体の機能や体の反応が過少に評価あるいは無視され、悲劇的な結末を招く(頭だけではなく、体の感覚も重要という点は「無学問のすすめ」でも書かれていた。

全体的に重く沈んだ気持ちとなる小説だ。題名を「こころ」としている点はよく考えられている。
その時代にスマホやらメールやらが使えたら成り立たないだろうなとか思った。



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