2016年6月11日土曜日

「1週間で8割捨てる技術」筆子

断捨離ブームから捨てることに注目が集まっている。捨てるための技術の紹介本で、ブログからの出版化をみたものとのことである。

捨てるかの判断で、この本では「反ときめき」が勧められている。すなわち、モノを捨てる判断基準として、「そのモノに触ってときめくかどうかで決める」のではなく、反対に「つかむ、捨てる」をワンツーのアクションでやることをすすめている。事実、捨てるかどうかですごく悩む状況はありがちなので、よい方法かもしれない。ちなみに自分のとる方法のひとつは、捨てる捨てないの判断に迷う場合、「保留」のための箱を用意しておき、そこに入れておく。しばらくそのまま放置しておいて保留の状態で使う機会がないことがわかれば、その時に後で捨てればよいのだ。

捨てることに対する「リバウンド問題」が取り上げられている。すなわち、ダイエットと同様、かたずけても、いつの間にかモノが増えて元どおりになるという現象だ。「食器を捨てる」の章で、食器を増やさない5つのルールがあり、そのなかに「100円ショップには行かない」がある。やはり大事なのはまずは買わないこと、買う場合には何かを捨てることがモノを増やさないコツなのだ。「安いから買う」という発想をまずは捨て去ることが肝要である(残念ながら自分としてもその発想がしみついている面は否定できないが。)前にも書いた気がするが、「一つ買ったら一つ捨てる」(特に洋服の場合)のポリシーがよいだろう。本書でも「ワン・イン・ワン・アウト」として紹介されている。

本来であれば「必要だから買う」という姿勢のはずだったのが、「モノを買うその行為自体」が目的となるがゆえにモノにあふれる生活に困るという結果を招いているのだろう。(「ショッピングセラピー」なんて表現で、言い訳にしているひともいるでしょうが。)捨てることが目的ではなく、モノが少ないシンプルな生活がもたらすものをイメージできれば、片づけ作業もはかどるだろう。

2016年5月8日日曜日

「一生モノの超・自己啓発」鎌田 浩毅

世の中にあふれるビジネス書や自己啓発本は、実のところ役に立つのだろうか?この疑問に対してひとつの答えを提示しているのが本書であろう。
「ビジネス書」が「ドクサ化」しているという指摘は的を得ている。「ドクサ」とは、ギリシャ哲学の用語で、「人間を絶えず惹きつけるものだが、必ずしも幸福にしないもの」らしい。また、これらのドグサ化したビジネス書のなかで謳われていることのマイナスな点は、そのハウツーができない場合、それができない本人に責任がある風に書かれている点だといっている点は新しい。つまり、うまくいかないことを見せつけられることで、本人の「無力感」が増大される可能性があるというのだ(それが出版社の思惑かもしれないが。)

「成功本はムチャをいう」という本でも、「書いてある通りできれば苦労はないよ」といった感じだった。本書でも同様に、「自己啓発本に書いてあることをすべてやろうとすると24時間では足りないのではないか?」と指摘している。
それでどうすればよいのか?という問い対する答えは、端的にいって「いいとこどりしよう」だ。「こうすればよいです」と書いてあることは、本によっても違うし、また、一番重要なことは、誰かの言っている黄金律は、「普遍的にだれにも適用できるわけではない」という点だろう。これは、健康法にも通じる点だ。例えば、「朝は早起きが健康に良い」といわれても、「すべての人に対して」この習慣がベストとは限らないだろう。食事にしても「肉食はよくない」といわれる一方で、「肉は長寿によい」と言われたりする。おそらく、このどちらも嘘ではない。嘘ではないが万人に適応できないだろう。なぜなら、同じ人間でも、それぞれの体質は同じではないからである(個人的には早起きで肉少なめな習慣がほとんどの人によいことだと思うが。)

ストックからフロー型の生き方、つまり、ため込まない生き方を勧めている。これはまさにミニマリズムに通じる点だろう。ため込まないのは物理的なものだけではなく、人間関係について「友達は3人いれば十分」や「SNSを休んでみては」などソフト面でも言及している。(浅い人間関係をひきずるのはやめようと言っている人は「お金じゃ買えない」の藤原和博氏も同様だった気がする。)

面白いと思ったのは「頭で考える」ことのほかに、「体の反応(体からのメッセージ)」に注目している点だ。例えば5月病についても無気力を体からのサインとし、休んでいればそのうちエネルギーがたまって何らかの方向で元気になるから心配ないという意見である。体の感覚の重要性は「無学問のすすめ」でも触れられていた。


自己啓発オタクやビジネス書オタクが読んでみるべき本であろう。著者のオタク経験に裏付けされているので説得力のある内容だ。