2020年7月24日金曜日

「簡易生活のすすめ」-山下泰平

ミニマリズムのブームからそれなりに時間が経過した。要は「シンプルに生きる」ことを目指している様式で、モノを減らすことが注目されがちだが、広くは人間関係などのソフト面を含むといえる。

この本では副題の通り、「明治にストレスフリーな最高の生き方があった!」と、日本では明治時代からミニマリズムに通じる生活様式(=簡易生活)を実践しようとする動きがあったことを、当時の文献、新聞記事をもとに紹介している。

当時の文献のうち、徳富蘇峰の「簡易生活」については、以下の3点に要約されるとしている(p.42)、
・実用がすべて
・簡易で簡素
・余計は排除

当時の実践者の事例で、広い家に住んでいたが簡易ではないと考え、狭い家に引っ越したが、やっぱり広い家に住みなおしたことが記述されている。
ここでの行動を
・思い立ったらすぐ実行
・失敗を恐れない
・間違えたら改める
とまとめている(p.68)。
これらの要点は、明治の始める方法・失敗する方法のまとめ(p.56)でも同様である。すなわち、
・始めさえすればよい
・失敗してもとらわれない
・改善すればいい
の3つである。

始めても失敗したと思ったらすぐに改める点が特徴的だ。別の選択肢としては、失敗しないように「よく考えて」、それから「実行」があるが、これではよく考える時間が余計なために簡易ではないということなのだろう。

当時の事情として、食事の用意する時間を減らす方法(電子レンジはもちろん、コンビニもない時代なので)とか、さらには、モノを食べないことが究極だとして、どれだけ食べずに生きていけるかをやってみた記事の紹介があり、なかなか笑わせてくれる。まさに、思い立ったらすぐ実行し、だめでも構わず、改善すればいいという思想である。

文明の発達により、当時は夢のような話が今は現実となっているので、今となっては問題とならない点も多い。一方で、「自分も他人も道具であり、とにかくうまく道具を使え」という「平民主義」の思想は、現在も適用できる考え方である。

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